逃亡者

コトを終えたリョウタさんと私ですが、まったりと
ベッドに転がっていたのも束の間、リョウタさんが
起き上がって、ソファに置いてある鞄から携帯電話
取り出して、着信履歴を確認するとおもむろに
電話をかけたのでした。

あ～～、なんか急な連絡が入ってたのかな・・・？

ピッ ピッ

ん？留守番メッセージ聞いてる？？

耳から携帯電話を話して、数回ボタン操作をして
再び耳に当てるリョウタさん。

ふと時計を見ると、19時を回っていました。

無言のままでじっと耳に当てて、メッセージを聞いて
いるのに間違いないようでした。

パタン

携帯電話を閉じるなり、リョウタさんが口を開きました。

「ごめん、なんか彼女・・・仕事終わって難波に来てるらしい・・・」
「え！？ホンマに？？大丈夫なん？ヤバくない？？」
「ん、大丈夫・・・でもちょっと電話するわ・・・」

マ、マジですかい・・・じゃあ、鳴ってた電話は
彼女からやってんね・・・。

バスタオルを腰に巻いたままのリョウタさんは
携帯電話を片手に洗面所のほうへと向かいました。

ま、聞かれたくないよね・・・。

・・・でも、聞こえちゃってたんですよね(^^;
もちろん、電話の向こうの彼女の声は聞こえないですが。

「ごめん・・・鳴ってんの気付いてへんかってん」
「早かってんな・・・うん・・・うん・・・」
「そう・・・日本橋のほう・・・うん・・・」
「うん、分かった・・・着いたら電話するわ・・・」

あ～～～彼女のところに向かうんやね、これは・・・

状況を察した私は、起き上がってバスタオルを巻いて
しっかり聞き耳を立てたまま、静かに待っていました。

しばらく話が続いた後、ようやくリョウタさんが
洗面所から戻ってきました。

「ごめんごめん」
「大丈夫？？」
「うん、大丈夫・・・でも行かなアカンから・・・」
「うん、それは聞こえててわかったよ(苦笑)」
「仕事終わったら電話するって言われてたんやったわ・・・
　　　ホンマ、すっかり忘れてた・・・ははは」

うむむ、彼女が日勤の日じゃなくて、夜勤とか準夜勤とかの
バッティングしない日にしなさいって・・・
まあ、私の都合とリョウタさんの都合もあるから
合わせるの難しいんだろうけど。

「アカンやん・・・ホンマに・・・シャワー浴びるね～」
「ごめんな、バタバタして」
「ん、いいよいいよ、気にせんといて～」

極力、早めにシャワーを浴びて出てきて、
リョウタさんが浴びている間に、化粧を直す私・・・。

そして、シャワーから戻るなり、そそくさと
服を着始めるリョウタさん・・・。

「ゆっくりでいいよ・・・」

って、そんなにあたふたと出る用意しながら
言っても説得力なかとです。

結局、バタバタと身支度を済ませて、ホテルを出たのでした。

そしてホテルの建物を出て、数m先の角で

「ごめん、俺、こっちから行くから・・・見られたらまずいし」
「うん、いいよ。じゃあ、気をつけてね」
「それじゃ！」

手を上げながら方向を変え、早足で行くリョウタさんの
後姿が、私の目に焼きついていました。

後日、

「この間はごめんなさい。今度はゆっくりできるときにします」

というメールが来たのですが、私は返信しませんでした(^^;
したがって、リョウタさんとはそれっきりです。

みなさんも日程調整には気をつけてね～～～

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